2021/01/27
2021年の1月22日に、【玉置浩二PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2021『THE EURASIAN RENAISSANCE “ОТТЕПЕЛЬ”』】の初日公演が東京文化会館 大ホールにて開催された。
玉置とbillboard classicsのオーケストラ公演は2015年以来、2019年まで毎年行われてきたが、2020年は予定していた全国16公演がコロナ禍のため中止に。この日、新たなサブタイトル“ОТТЕПЕЛЬ”=(オーチェペリ:雪解け)を冠して遂に待望の幕開けを迎えた。
演奏を務める新日本フィルハーモニー交響楽団と指揮の栁澤寿男が登場すると、まずは「歓喜の歌」が奏でられる。2015年の栁澤の著書『バルカンから響け! 歓喜の歌』に感銘を受けた玉置が2016年に作曲した交響曲に込められているのは、両者の“平和”への祈りだ。
そして観客の大きな拍手に迎えられて、いよいよマスク姿の玉置が登場だ。大晦日はNHK紅白歌合戦に出演し、新年には新作セルフカバーアルバム『Chocolate cosmos』の無観客ライブ特番に『玉置浩二ショー』とテレビ番組が続いたが、観客を前に歌うのは実に約1年振りである。
マスクを外し、玉置が最初に歌ったのは「ロマン」。2019年の公演でも歌われた、強く結ばれた2人の愛を描いた約束の歌だ。
続いて「Sacred Love」、「いつもどこかで」、「キラキラ ニコニコ」を披露。1曲を歌い終える度に、観客から大きな拍手が起こる。さらにはメドレーで「MR.LONELY~プレゼント~サーチライト」が続く。第一部のラストは「Friend」だ。ドラマチックなオーケストレーションとこの上ない切なさが客席を包み込む。
よく“孤高”、“現代最高峰”と称される玉置だが、生の歌声を聴くと、それが決して過剰な表現ではないと改めて思い知る。発声やピッチ、ファルセットや独自の間の取り方といったテクニカルな部分はもとより、歌へ注がれる精神力と繊細な詩情を歌声に昇華させる表現力が圧倒的なのだ。
20分間の休憩を挟んでの第二部は、オーケストラの演奏によるバッハの「G線上のアリア(管弦楽組曲第3番ニ長調BWV1068 第二曲「Air」)」から「GOLD」、「行かないで」、安全地帯メドレー「ワインレッドの心~じれったい~悲しみにさよなら」と続いた。「悲しみにさよなら」の終盤、歌詞を変えて歌われた〈愛を世界中のために〉という一節に観客から大きな拍手が沸き起こる。
そして「JUNK LAND」を経て、本編のラストは「夏の終りのハーモニー」。オフマイクの玉置の歌声がホールに木霊した。
アンコールでは、ベートーヴェンをプロローグに始まった「田園」のリズムに、会場の軽快な手拍子がひとつになる。〈愛はどこにある。東京にある〉、〈みんなここにいる 愛はどこへもいかない〉という玉置の力強い歌声に観客の手拍子もヒートアップ。最後は歌ってもなお余りある情熱を放ったかのような玉置のシャウトで、清々しいまでの大団円を迎えた。
演奏を終えて、玉置と栁澤はハグの代わりに肘をバンプして互いの健闘を称え合うと共に会場左上の時計に目を向けた。(※緊急事態宣言発令中のため)20時までの残り時間を確認して、最後は「メロディー」を披露。過ぎし日への郷愁を綴った歌詞がコロナ禍における音楽の力と慈しみを体現しているように感じられた。
2020年のSTAY HOME中、玉置はコンサートの中止から自分の存在意義を見出せなくなり、一度は「歌うことを辞めてしまおう」とさえ考えたという。しかし、こうして観客の前に帰ってきた。苦難の時代の終息への祈り。新たなるスタート。まさしく二つの“雪解け”の思いが具現化された記念碑的な一夜だった。
今後、本公演は2月に東京、大阪、3月に熊本、札幌での開催が予定されている。東京と熊本は栁澤が、大阪と札幌は円光寺雅彦が指揮を執り、演奏は各地毎に異なるオーケストラが務める。
――玉置浩二は歌う。“雪解け”の先に待つ“春”を目指して。
Text by 内田正樹
Photo by Eri Iwata
◎公演情報
【billboard classics 玉置浩二 PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2021
『THE EURASIAN RENAISSANCE “ОТТЕПЕЛЬ” 』】
(読み)ザ・ユーラシアン・ルネッサンス “オーチェペリ”
【東京】2021年1月22日(金)OPEN 17:00/START 18:00 東京文化会館 大ホール ※終演
出演:栁澤寿男指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団
【東京】2月11日(木・祝)OPEN 16:00/START 17:00 東京国際フォーラム ホールA ※完売
出演:栁澤寿男指揮 ビルボードクラシックスオーケストラ
【大阪】2月27日(土)OPEN 16:00/START 17:00 フェスティバルホール ※残席わずか
出演:円光寺雅彦指揮 京都フィル・ビルボードクラシックスオーケストラ
【大阪】2月28日(日)OPEN 15:00/START 16:00 フェスティバルホール ※残席わずか
出演:円光寺雅彦指揮 京都フィル・ビルボードクラシックスオーケストラ
【熊本】3月8日(月)OPEN 18:00/START 19:00 熊本城ホール メインホール ※完売
出演:栁澤寿男指揮 九州交響楽団
【札幌】3月23日(火)OPEN 18:00/START 19:00 札幌文化芸術劇場 hitaru
出演:円光寺雅彦指揮 札幌交響楽団
※1月28日(木)よりプレイガイド先行開始。詳細下記参照
チケット:14,000円(税込・全席指定)※未就学児入場不可
※特製DVD付き:2019年ロシア国立交響楽団&薬師寺・世界遺産コンサート等を収録
◎チケット情報
【札幌公演】
道新プレイガイド先行:1月28日(木)10:00~2月11日(木・祝)23:59
0570-00-3871 http://doshin-playguide.jp/
一般発売:2月18日(木)
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